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松山で「刺繍のある暮らし~cozysphere~」手仕事にこもった物語楽しむ

料理家で刺しゅう作家の池内久江さん、大学生のときに母と取り組んだ初めての作品の前で

料理家で刺しゅう作家の池内久江さん、大学生のときに母と取り組んだ初めての作品の前で

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 松山の「ギャラリー リブ・アート」(松山市湊町4)で10月8日、料理家・池内久江さん著書「刺繍(ししゅう)のある暮らし~cozysphere~」出版記念イベントが始まった。

会場の中央にならぶ季節のティーコゼー

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 著書には、2010(平成22)年から池内さんが主宰する料理教室で紹介した料理の写真やレシピのほか、季節のテーブルコーディネートを彩る刺しゅう作品と図案などを掲載。会場には、本の中に登場する季節ごとのテーブルや、季節のモチーフをテーマにしたティーコゼーなどが並ぶ。

 池内さんは「これまでしてきたことをまとめて、本を作り、作品も見ていただき、これから先を考える基点にしたい」と、初の個展開催への思いを語る。

 「10代のころ、家庭科の授業で作る刺しゅうにはあまり魅力を感じなかったが、母の雑誌で垣間見る海外の繊細な作品には憧れを感じていた」と池内さん。「初めての大掛かりな作品は、大学生の時に妹の夏休みの宿題を手伝って作った、麦の穂モチーフのテーブルクロスだった。結局、手芸が好きだった私と母ばかりが妹そっちのけで仕上げてしまい、父があきれ顔で見ていたことも懐かしい思い出」と笑顔を見せる。

 その後、刺しゅうとは縁のない時期が続いたが、30代後半になって生活が落ち着き、料理教室を始めたことで再び針を持つきっかけが訪れた。「教室では季節の野菜やハーブを取り入れたコース料理を作り、最後にデザートと紅茶を楽しむ。刺しゅう好きの友人と知り合ったことも重なり、紅茶のポットを保温するために使うティーコゼーに季節の彩りを取り入れたいと、季節のモチーフを刺しゅうしたものを作るようになった」と話す。

 会場には、池内さんの作品のほかにも、刺しゅう仲間が作ったトートバッグやタペストリーなどの作品が並び、彩りを添える。

 「作る楽しみはもちろん、作品には作っていたときの思い出や、そのときの空気感などが物語のように詰まっている。長く使っていると糸の部分がすり切れてくることもあるが、時間とともに生まれる変化も魅力的な味わい」と池内さん。

 「絵を上手に描けなくても、好みの図案を見つけて編集するように配置することで作品を作れるのが刺しゅうの大きな魅力。思い出のこもった洋服の生地をリユースして裏地に使ったり、いろいろな工夫や遊び心をこめられたりする楽しさもある」とも。

 訪れた松山市内の女性は「細やかでポップなものからリアルな描写の作品まで、刺しゅうの表現力の豊かさに改めて驚いた。私も時間を作って小さな作品を刺してみたいなと思った。生活に追われがちな心に余裕が戻ってくるような気がする」と笑顔を見せる。

 開催時間は11時~19時まで(最終日は17時まで)。観覧無料。会期は今月13日まで。会場では著書「刺繍のある暮らし~cozysphere~」(1,300円)も会場で販売する。

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