松山の洋食店「キッチンハウスさんりんしゃ」が閉店-30年の歴史に幕

「キッチンハウスさんりんしゃ」を経営していた佐々木さん夫婦

「キッチンハウスさんりんしゃ」を経営していた佐々木さん夫婦

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 松山・中央商店街で30年営業を続けてきた洋食店「キッチンハウスさんりんしゃ」(松山市湊町3)が1月11日、閉店した。

開店した30年前からシンボルとして飾られていた看板の跡

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 同店は1981(昭和56)年、それまでサラリーマンだった佐々木さんが夫婦で喫茶店として開業し、25年前に洋食店に改装した。開業以来変わらぬ味を提供し続け、ボリュームがあり手ごろな価格のメニューは子どもから大人まで幅広い世代に人気があった。周囲の店が経済的な理由や健康面での理由から閉店していくなか、元気なうちに周囲に迷惑をかけずに閉店したいと思っていた佐々木さん夫婦。昨年10月、家賃の更新のタイミングで夫婦で話し合い、「ここがやめ時」と閉店を決めた。

 2008年1月、ラフォーレ原宿・松山が耐震構造問題で閉店。郊外の大型SC出店などが重なり、以降同商店街の集客は減少傾向にある。30年間にわたり街の様子を見てきた佐々木さん夫婦は「バブル崩壊後も周囲の店が『売り上げが半分しかない』と言っているなか、何とかやっていけた。しかしラフォーレ閉店から目に見えて人が減ってしまい、商店街も元気がなくなってしまった」と話す。近年は駐輪のルールを守らない商店街利用者が多く、街の美化を損ねると行政による放置自転車の取り締まりで路上駐輪の規制が厳しくなり、これまで自転車で来ていた若者を中心とした利用客が大幅に減少しているという。

 昨年12月に入り閉店を公表したところ、常連や以前のなじみ客が県内各地や県外から来店。10日に閉店予定だったが、利用客の要望により閉店日を1日ずらした。学生時代によく同店を利用していたという男性は小学生の息子を連れて来店し、「さんりんしゃは青春の全てだった」と涙を流した。閉店日には「出会いの記念に」と、訪れた客に店内で使っていた食器などを進呈した。中学3年生の男子は店のシンボルだった看板を、「自分が若い分、長く守れる」と持って帰ったという。看板は30年前の開店の際、佐々木さんの友人にロゴをもらって作られたもの。「開店以来30年間、『さんりんしゃ』の泣き、笑い、多くの人の人生を見守ってきてくれた」と妻の裕子(ひろこ)さんは話す。夫の長(ひさし)さんが作るハンバーグの味を家庭でも作りたいと料理教室を開いてほしいという声も寄せられた。

 裕子さんは「開業を手伝ってくれた仲間が閉店のときも手伝ってくれた。30年も続けてこられたのはお客さんや業者に恵まれたから。人と人とのつながりが希薄になっているといわれているが、大変なときに何かをしてくれるのは人。何かあれば周囲の人が手を貸してくれたので大きなトラブルもなく、開店から辛かったことも一つもなかった」と涙ぐみながら話した。「30年前に子どもだった子が、自分の子どもを連れて来店してくれていた。血のつながりはなかったが、みんな自分の家族や子どものようだった」とも。

 「おかしいかもしれないが幸せな閉店だった。店をやめるまでわからなかったが人の温かさや優しさを感じ、こんなにも愛されていたのかと分かった。元気なうちにやめて周囲にもきちんとあいさつして回れたので閉店に悔いはない。第二の人生を頑張りたい」と長さんは締めくくった。

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