株式会社WiseVine(本社:愛媛県松山市、代表取締役:吉本 翔生、以下「WiseVine」)は、長野県佐久市の財政課にインタビューを実施しました。予算編成・財政運営支援システム「WiseVine Build & Scrap」(以下、BnS)をいち早く導入いただいた同市の取組と、その背景にある課題意識をお聞きしました。

<お話を伺った方> 佐久市総務部財政課財政係 金澤 史法 様
長野県、新潟県、佐久市の3自治体は共同調達を実施し、株式会社WiseVineの予算編成・財政運営支援システムBnSの導入を決定しました。現在、多くの自治体が、予算編成機能と執行機能が一体となったシステム(以下、一体型システム)を利用していますが、佐久市は今回、予算編成・行政評価領域に特化したシステムを調達することを選択しました。
本記事では、システム見直しの背景や期待する効果、既存ベンダーとの連携調整、そして、デジタル活用推進事業債等(以下、デジ債)を活用した共同調達についてインタビューした内容をまとめています。
佐久市の財務会計システムは、平成17年の市町村合併時から約20年近く稼働しており、現行システムの老朽化に加え、コロナ禍以降、庁内全体でDXやBPR(業務プロセス改革)への取組が推進される中、財政課にもその波が押し寄せてきました。また、近年の業務過多により超過勤務時間が月150時間超となるなど、そろそろ業務改善も必要ではないかという空気感もありました。
財ラボ(一般社団法人新しい自治体財政を考える研究会)の調査でも、「現行システムで予算要求の分析ができない」「ExcelとWord帳票の二重管理になっている」といった課題が全国共通の問題として浮き彫りになっており、財政課はBPRが難しい部署のひとつと認識されています。
佐久市も同様の状況であり、「数字を間違えられないから紙ベースからの脱却は無理」「業務改善を練る時間的余裕はない」「先人が積み上げてきた手順を変えることが怖い」など、たくさんの障壁がありました。さらに、予算編成と行政評価が紐づいておらず、「何のために評価しているのか分からない」という懐疑的な目も庁内からありました。
私は、国への出向(内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局(現・地域未来戦略本部事務局)、内閣府地方創生推進事務局)、帰任してからは企画課での勤務を経て財政課へ異動した1年目から、財政課内のBPRを担当することになりました。
現状の予算査定は、システムから出力された要求書及び説明資料を紙ベースで提出してもらい、メモや査定額などを紙に記載していき、査定額のみをシステムに入力するという方法をとっています。差し替えが発生すればそのたびに紙を入れ替えてメモを写し直します。原課への質問もメール・チャット・電話とバラバラで統一ルールはありません。翌年度に「去年なぜこう査定したのか」を確認しようとしても、記録が見当たらなかったり、「それは当時の担当者の頭の中にしかない」という事態も珍しくありませんでした。
また、部長査定以上は、財政課職員で作成する「主要事業説明書」(Excel、PowerPointで作成)で査定理由等を説明しています。現在はデータを投映して査定を受けていますが、2年前までは1部50ページ近くにわたる資料(当初予算だと200ページ近く)を15部その都度印刷していました。
内示の段階では、原課は査定額のみシステム上で閲覧でき(財政課では査定額しか入力していない)、査定理由は別途口頭で伝える時間を設けています。
情報の分散も悩みのタネです。査定額はシステム、メモは紙、理由は主要事業説明書など、媒体がバラバラで一元管理できていません。査定理由は口頭でしか伝わらないため「言った・言わない」の問題が発生することもあります。
新システムでは、ヒアリング・査定・内示までの「過程」を含めて、システム上で一気通貫させることを目指しています。チャット形式のメモ機能で査定の経緯を蓄積し、ノーコードのクロス集計で必要な帳票をすぐ出力できます。さらに、事務事業評価もシステムに取り込む予定です。政策形成から予算編成、行政評価までを一気通貫し、これまで予算編成に反映できなかった行政評価を意味あるものにアップグレードしていきたいと考えています。行政評価がうまく機能すれば、佐久市の課題であるやりっぱなしの事業を廃止・縮小し、事業の「選択と集中」がより図られ、その結果、住民サービスの向上に資すると期待しています。
佐久市では、原則、実施計画で認められた事業のみが予算要求できるという運用をとっています(いわゆる政策的経費のみ)。 この運用は総合計画の第一次計画から数えて約20年前から続いており、総合計画を意識した予算要求の土台は整っています。
ただし、実施計画は企画課でExcel管理されており、予算査定段階では紙の要求書とExcelを行ったり来たり、また、予算事業と実施計画事業で事業単位が統一されておらず、実施計画のどの事業が要求されているのかが一目瞭然ではない、更には、行政評価を予算査定に適切に反映できないなどの課題があります。
そこで、新システム導入後は、予算事業と実施計画事業、また、事務事業を統一する運用を図ろうと考えています。政策・施策・事務事業ごとにKPIを設定するとともに、事務事業単位で実施計画事業を立案し、実施計画事業単位で予算事業として予算要求し、予算査定段階では要求された予算事業に係る事務事業の評価を査定結果に反映させます。政策・施策・事務事業をツリーで可視化して、予算査定時にそれぞれのKPIの結果等を参考に事業優先順位を決める仕組みを構築することで、事業の選択と集中による総合計画に基づく行政運営を実現できます。あわせて、総合計画の進捗管理も効率化できます。
おそらく全国の自治体でも同様の課題があるかと思いますが、こうした運用は、BnSで実現できると思っています。将来的に運用が変更になることも考えられますが、SaaS型のBnSは世の中の変化に合わせてアップデートされ、また、将来の要件に柔軟に対応できる基盤が整っているので、その点での不安はありませんでした。
なお、この統一に向けた旗振り役は財政課で担います。私は、企画課に4年間在籍した経験から企画部門の事情もよく分かっており、新システム導入のタイミングに合わせて庁内照会を実施し、予算事業と事務事業の紐付けを整理しました。事務事業レベルの最終的な調整は企画課の行政改革担当に引き継ぐ予定です。
財務会計システムの主な役割は、予算執行を正確に行うことで、債権者への支払いといった実際のお金の動きを管理する執行機能がメインになります。予算編成機能は、言ってしまえば「おまけ」みたいなものと理解しています。
もちろん、移行期には現行システムとの操作感の違いで現場が戸惑うことも想定しています。複数回の研修や詳細なマニュアルを用意して、丁寧に移行を進めていく予定です。
新システム導入の検討に当たっては複数ベンダーのデモも受けました。ほとんどのベンダーはカスタマイズ不可が原則で、現行システムで使っていた独自機能を移行できない問題がありました。やはり「既存の焼き直し」になってしまう印象で、なかなか決断できずにいました。
BnSを選んだ決め手は主に2点です。
1点目は、帳票レイアウトを追加費用なしで自由に変更できること。他ベンダーではカスタマイズのたびに費用が発生し、運用変更のたびに帳票が変えられなくなってしまう問題がありました。BnSであれば運用変更に合わせてすぐに改修できます。
2点目は、総合計画と行政評価が予算編成と紐付いている点。「そこが一番の魅力でした」。企画と財政の両方を経験した立場から、行政評価を予算査定に真に活用するためにはこの連動が不可欠と確信しました。
WiseVineには元財政課職員が10名程度在籍しており、現場の課題を深く理解した上で機能開発に注力しています。導入後も元財政課による伴走サポートと継続的なアップデートにより、他自治体での活用知見も随時反映されていくことを期待しています。
新システム導入に当たり、当初、既存システムとのデータ連携に不安がありました。佐久市では、予算編成と予算執行管理が一体となった財務会計システムを使用しており、この度の導入によりシステムが分離されるため、既存の財務会計システムとWiseVineの新システム間でのシームレスなデータ連携が必要不可欠でした。
この点について、佐久市、既存の財務会計ベンダー、WiseVineを交えた三者でのデータ連携協議の場を早期から複数回実施しました。マスタデータの持ち方や連携のタイミング、決算統計の役割分担など、技術的なすり合わせを丁寧に行ったことで、標準的な連携が可能であるという共通認識を形成できました。既存ベンダーとしっかりと調整を行えば、既存システムとのデータ連携は決して高いハードルではないことが分かりました。
令和6年度に検討を始めた当初、財源は一般財源で賄うつもりでしたが、令和7年度に「デジタル活用推進事業債(デジ債)」が創設されました。活用には「住民サービスに必要なシステムの導入」や「共同調達」といった条件がありました。全国から同時期に更新する自治体を探すことは難しいと思っており、共同調達は当初は考えていませんでした。
しかしながら、令和7年4月頃、私の国出向時代、同じチームで汗を流した同僚が新潟県財政課に所属しており、たまたま、今回の調達の件を相談しました。当時、新潟県と長野県で予算編成・財政運営支援システムを共同調達しようと検討が進められており、佐久市もここに参加したというのが経緯です。
今回のデジタル活用推進事業債の活用は、3団体で導入時期を同じくするものであり、本当に偶然でありました。今回のご縁に感謝します。
今回、県と市という規模の異なる共同調達となりました。しかし、財政課の業務内容は、県も市も同様であり、意思疎通が図れなかったということはありませんでした。また、BnSのSaaSの特性を生かすことで、単一の仕様書に基づき調達を行うことで全体の財政負担を低減しつつ、共通のシステム基盤を持ちながらも、団体独自の評価項目や多様な帳票様式にはシステムの標準機能内で柔軟に対応できました。これにより、共同調達のメリットを最大限に享受しつつ、団体独自の運用も無理なく進めることが可能となりました。
長野県・新潟県の担当者は大変優秀な方であり、3人で力を合わせて良い仕様が作成できたと思っています。私一人では、時間的にも能力的にも、とてもここまでのものを作れなかったです。また、今回の共同調達を理解し、後押ししてくださった若林前財政課長(現・環境部長)、岩下財政課長、遠藤前財政課課長補佐(現・こども家庭支援課長)、大井財政係長、また、同僚の皆さんに、この場を借りて感謝申し上げます。
佐久市の課題感は、全国自治体の財政課・企画課が持つ課題感と共通であると思います。特に、一体型の財務会計システムは、結果の登録を中心とした機能構成となっているケースが多く、業務運用を改善しただけでは的確なBPRを進めることはできません。
今後は、検討の過程からデータを蓄積し、総合計画から行政評価までを有機的に結びつけ、政策形成・事務事業管理まで一気通貫で行えるシステムが、自治体経営を支える強力な基盤となると考えています。「より効率的に査定や行政評価を行いたい」「データに基づいた政策立案を進めたい」とお考えの全国自治体の財政課・企画課の皆様、次期システムをご検討される場合には、ぜひお気軽にご連絡ください。
法人名:株式会社WiseVine
本社所在地:愛媛県松山市湊町4丁目11-4 A-ONEビル3F
代表取締役社長:吉本翔生
設立:2018年3月1日
事業内容:自治体向け予算編成・財政運営支援システム「WiseVine Build & Scrap」の開発・提供 など
HP:
https://corp.wise-vine.com/
お問い合わせフォーム:
https://corp.wise-vine.com/contact
株式会社WiseVine(広報担当)
TEL:050-1741-2052
お問い合わせフォーム:
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