小学5・6年生と中学生を対象に、愛媛大学(松山市道後樋又10)が「ジュニアドクター育成塾」の本年度講座をスタートする。開講は9月8日。現在、受講生を募集している。
「ジュニアドクター育成塾」は科学技術振興機構が実施するプロジェクト。本年度は、国立大学や高等専門学校などが提案した中から、外部有識者会議などの審査を経て採択された24のプログラムが全国で実施される。
愛媛大学が掲げる本年度のキャッチフレーズは「子どもの『好き』を伸ばそう」。「昆虫が好きだから理系」「読書が好きだから文系」といった、子どもの才能を従来の「文系・理数系」の枠に当てはめるのではなく、デザインや言語学・心理学・プログラミング・工学・医学・スポーツ科学などさまざまな得意分野を持つ子どもたちが、幅広いテーマの課題に取り組み、学年を超えて切磋琢磨(せっさたくま)しながら能力を伸ばすことを重視する。「使われる才能」ではなく「時代を動かすイノベーター」の育成を目指す。
今回のプログラム策定に当たり、事務局長の大橋淳史さん(愛媛大学教育学部准教授)は、子どもたちが将来、社会で自分の「思い」を実現したり「好き」を生かしたりできるようになるための方法として「起業」に着目した。
大橋さんは、これまでのプログラムが、子どもたちの今の興味をより深めることに終始しがちな点に課題を感じていたという。
「今回は、幅広い分野のテーマに取り組むことで子どもたちの関心を広げ、そこから新たな能力を伸ばすことを重視している。既に突出した得意分野を持っているならば、将来的に職業としてどのような展開の可能性があるのか、その多様性に気付くきっかけもつかんでほしい」と話す。
「一般に、学校で成績がよく勉強ができる子どもは、インプットは得意だがアウトプットが苦手な傾向を持っているのが課題。これからの時代の研究者やリーダーには、研究や事業の価値、魅力などを社会に分かりやすく伝え、自ら資金を調達して遂行する能力が求められる。さまざまなテーマの講義や実験に加えて起業家精神を学び、デジタルツールを活用したアウトプットを実践することで、研究者や研究の価値を社会に伝えるコミュニケーター、社会のリーダーなど、将来どのような立場になっても、スピード感を持って自走することのできる人材に育ってほしい。この育成塾がその種をまく機会になれば」と熱意を語る。
講師陣は、思考の見える化を手助けするグラフィックレコーディング講師の和波里翠さん、複言語学習で相手に届く言葉を育む大阪大学教授の岩居弘樹さん、錯視の研究で有名な立命館大学教授の北岡明佳さん、起業やお金の教育を担当する税理士の稲見益輔さんなど多彩。
参加は無料、募集期間は8月18日まで。応募はホームページで受け付ける。