デザイン未経験者も大歓迎「デザインと情報編集の考え方」で地域の魅力を発信
提供:Rethink Creator Project 制作:松山経済新聞編集部
地域の日常の風景を題材に、ワークショップ形式で「デザインと情報編集の考え方」を学ぶ「Rethink Creator PROJECT 松山セミナー」が、松山市の後援を受け、8月31日にマツヤマンスペース(愛媛県松山市千舟町5)で開催されました。
地元テレビ局や新聞社などのメディアも取材に訪れ、活気ある雰囲気の中、20代から50代までの参加者29人が「身近な日常に潜む魅力を掘り起こし、誰かに伝える」ことの面白さや、デザインの奥深さを体感した150分間のセミナーの模様をお伝えします。
2018(平成30)年10月に東京で初開催された「Rethink Creator セミナー」。2年目に突入した今年は、松山市のほか、全国各地で30回以上の開催が予定されており、これまでに4200人余りがプロジェクトに参加登録しています。
「地元を誰かにまかせない」をキャッチフレーズに全国で開催されているこのセミナーは、「学び」と「挑戦」を通じて、これからの地域に必要な「自ら考え、発信することができるクリエイター」を日本中に創出していくことをミッションに掲げています。
プロジェクトのキーワードは「Rethink」。いつもは何も考えずに通り過ぎてしまうような、身近な風景や日常の中にある潜む魅力を、視点を変えることで再発見し、クリエイティブに発信するためのスキルをワークショップ形式で学びました。
本日登壇したファシリテイターのお二人は、クリエイターズマッチの羽室吉隆さんと、地元愛媛の井上和俊さん(KruSPO代表、フリーランスディレクター・デザイナー)。冒頭、羽室さんの「今日は『Rethink』をベースにしたデザインの考え方を学んで、ぜひ、デザインを『ナメて』帰ってほしい」との発言に、会場がざわめきます。
ファシリテーターを務める羽室吉隆さん(クリエイターズマッチ)
今日は、参加者の半数以上が「デザイン未経験者」。一見ハードルの高そうな「デザイン」を、身近な、日常生活の一部にすることができるのか…これから始まる「Rethink講座」と「Createワークショップ」に期待が高まります。
はじめに行われた「Rethink講座」では、「内側から見る(Insight=インサイト)」「属性を見る(Filter=フィルター)」「印象を見る(CAPTA=カプタ)」という、デザインをする上で重要な3つのスキルが紹介されました。
参加者は講師から投げかけられる質問に次々と答える中で「いつもの、何でもない、見慣れた」景色の中から、どうすれば「面白い、特別な、心に刺さる表現」を作り出すことができるのか。そのためのヒントをどんどん体験して吸収していきます。
Rethinkセミナーで紹介されたデザインの3要素「Insight/Filter/CAPTA」
特にDATA(正確で堅い、イメージを伴わない情報)とCAPTA(正確性には欠けるが、自由で柔らかく感情やイメージを伝える情報)の概念には初めて触れたという参加者がほとんど。講師の羽室さんは「現代の人たちは、ネットやスマホで日常的に『DATA』情報に触れており、頭もそれに慣れているが、『CAPTA』情報は、調べて得られるというものではない。これをかきあつめることができるよう、意識的に脳を活性化することが、人の心に刺さり、印象に残る表現を作り出すためのキーになる」とその重要性について話しました。
講座の後はいよいよ、参加者による「Createワークショップ」。地元愛媛出身のファシリテーター井上さんが、街の中から切り取ってきた6枚の写真に、参加者がキャッチコピーをつけて地元の魅力をアピールするポスターに仕上げていきます。
用意された写真は「親父が釣った大量の太刀魚」「島遊び『スプラッシュビーチ The 中島』」「キャラクターイラストで彩られ、子供用遊具が置かれた怪しい居酒屋」など6枚。参加者はまずそれぞれに、3つのステップでコピー作りに挑戦しました。
それぞれの課題に向き合って、コピー作成開始
「撮影者の気持ちになって、伝えたい相手を想像する(Insight)」、「写真を様々な角度で見てキーワードとなる言葉を見つける(Filter)」、「キーワードを組み合わせてコピーを作る(CAPTA情報の活用)」のステップを、1分~3分程の短い時間の中で次々にこなしていく作業に、普段使っていない脳の部位がフル回転。刺激的で濃密な時間です。
個人でのワークが終わると、次はチームのメンバーと、お互いが考えたキーワードについて話し合いを行います。他者の視点を共有することで、思わぬ新たな切り口が見えてくることも。最後はチームで協力して、メンバーが出し合ったキーワードを組み合わせ、写真を引き立て、最大限に魅力を伝えるためのコピーを作り出しました。
チームで話し合い、他者の視点を取り入れてコピーを練り上げる
頭を抱えるチームあり、迷走するチームあり、早々に会心のコピーを仕上げて晴れやかな表情のチームあり。
羽室さんからは「コピーを作ろうして考え始めると、どうしてもつい『情報』に引っ張られがちになる。カッコ良くなくてもいい。意味不明な言葉が面白くて印象に残ることもある。『カプタ』情報を生かし、誰かに話しかけるような気持ちで作ってみて」とアドバイスの言葉が投げかけられました。
各チームが完成したコピーを発表し、羽室さんがそれを写真の上に乗せていきます。参加者の側から、文字の大きさや位置についてこだわりある細かな注文が飛び出すこともあれば、羽室さんのアイデアで、写真をトリミングして一部にフォーカスしたり、文字に動きをつけることでニュアンスを変化させたり。『成果物発表』の場は、活発な意見が飛び交うコラボレーションの場となりました。
キャッチコピーを発表し、ポスターに言葉を乗せる
こうして制作された6点の力作がこちらです!
参加者と熱いコラボレーションを繰り広げた羽室さんは「四国での開催は今回が初めて。開催する場所によって、それぞれに『地域性』のようなものを感じるが、今回は懐かしい商店街のような、和気あいあいとした程よい温度感を感じた。」と話します。
「今回のように、参加者から細かい指示やアイデアがたくさん出るのは、リラックスして打ち解けた雰囲気になっているからこそ。地元クリエイターとして登壇してくれた井上さんと、スムーズにコミュニケーションを取りながらワークショップを進めていくことができたのもとても良かった。未経験者の方がいきなりデザインを仕事に、というのは難しいかもしれないが、日々のSNSでの情報発信などに『Rethink』の考え方を取り入れてみてほしい。デザインと情報編集の考え方を活かせる場は、生活の中にもたくさんある。これからも、地域の人と人をつなげていきたい」と今後への意欲を語りました。
ファシリテータを努めた羽室さん(右)と井上さん(左)
2018年に東京で初開催し、2年目に突入した「Rethink Creator PROJECT」。日常のなかにある魅力を再発見し、クリエイティブに発信することのできる「Rethink Creator」を日本中に生み出し、それぞれの「地域」「文化」「暮らし」に合った発想を、自分たちの力で発信していくことで「クリエイターの地産地消」を実現することを目指しています。
主催するのは「クリエイターが働きやすい世界の創造」をビジョンに掲げ、制作・開発・教育事業を手掛ける「クリエイターズマッチ」(東京都渋谷区)。JT(同港区)が2017年から展開する「JT Rethink Project」とのコラボレーションで、全国各地で開催するこのセミナーが実現しました。
「視点を変えれば世の中は変わる」JTマーケティンググループ嶋倉さん
JTマーケティンググループの嶋倉俊平さんは「現在、広告などに使われているビジュアルなどのデザインは、ほとんどが東京で制作され、全国に展開しているが、今後は、地方に合ったクリエイティブを地方のクリエイターが作っていく時代だと考えている。短い時間のワークショップだが、これをきっかけに、今後我々と一緒に仕事をすることができる人が育ってくれれば嬉しい」と地方のクリエイティブの発展に期待を寄せました。
セミナーで学んだことを生かし、チャレンジすることのできる場として「Rethink Creative Contest」が用意されています。開催は年3回。審査基準では、技術よりもアイデアと面白さを重視し、各回5~10人の優秀作品を発表します。
更に、コンテスト参加者は、年1回開催されるチャンピオンシップへの参加権を獲得。チャンピオンシップでは年間最優秀作品を決定し、11月末に東京で開催される「Rethink Creative AWARD」で作品の発表と表彰式が行われます。
コンテストと年間アワードのテーマは、今回のセミナーと同様、地域をテーマにした作品を対象とした「Rethink Creator賞」と、「JT Rethink賞」の2部門。
JTの嚴さんは「JTでは、従来のたばこの常識にとらわれない『Rethink』活動を通じて、吸わない人のために『においも煙もないクリーンなたばこ』の開発を進めています。進化したクリーンなたばこが実現する、ちょっと先の未来を想像するきっかけになるような作品を募集しています」とJTの取り組みとJT Rethink賞について紹介しました。
参加者の皆さんを対象に行なったアンケートの結果、セミナーの内容に「とても満足できた」と回答して下さった方が88%、「満足できた」が12%となり、合計なんと100%。参加した全員の方がセミナーの内容に満足して下さったことがわかりました。
アンケートの結果、「とても満足できた」「満足できた」が計100%に
一時期デザインの世界に進みたいと考えたこともあった、と話す参加者の50代の男性は「可愛いものが好きで、自分好みのものがなかなか世の中にないので、何とか自分で作れないだろうか。ちょっとデザインができたらいいのに、と思っていたところに今回のセミナーを知り、思い切って参加してみた。」と話します。
「今日のセミナーで一番強く心に残ったのは『デザインはコミュニケーションだ』ということ。決して一方通行はなく、デザインはメッセージを発信し、見た人もそれに対して何らかのリアクションを返す。世の中にある作品全ての背景には様々なストーリーが広がっていることを知り、デザインの奥深さ強く感じた」と感想を語って下さいました。
「Rethink Creator PROJECT」では、「Rethink:情報編集」と「Create:デザイン」をより深く学ぶことができる約5時間の動画を、ユーザー登録した人全員に無料で公開しています。動画の監修は「編集工学研究所」と「イシス編集学校」。20分の講座と150分のセミナーだけでは学びきれなかったデザインと情報編集のより深い部分を、しっかりと学べる内容です。
今年のセミナーは残すところ、盛岡・弘前・秋田・奄美の4都市。各地で生まれた「Rethink Creator」の芽が大きく育ち、地域を元気にしてゆく未来に期待したいです!
今後のセミナー開催日程について
仙台セミナー
【定員】30名
【日時】10/5(土)14:00~16:30
【会場】デジタルハリウッドSTUDIO仙台
【住所】宮城県仙台市青葉区中央一丁目3番1号 AER 26階
高松セミナー
【定員】50名
【日時】10/13(日)14:00~16:30
【会場】香川産業頭脳化センター 2階一般研修室
【住所】香川県高松市林町2217-15
日向セミナー
【定員】30名
【日時】10/20(日)13:30~16:00
【会場】ひむか-Biz
【住所】宮崎県日向市鶴町2丁目7−13 ITセンター 1F