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保存修理工事進む道後温泉本館の見学会 10~12月の参加者募る

2019年8月10日に行われた、第1回見学会の様子

2019年8月10日に行われた、第1回見学会の様子

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 保存修理工事が進む松山市の道後温泉本館(道後湯之町5)で、市民や観光客を対象とした工事見学会の参加者を、9月30日まで募集している。

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 道後温泉本館は1894(明治27)年、建物の北側に当たる「神の湯本館棟」が完成。引き続き、皇族の入浴用として1899(明治32)年に「又新殿(ゆうしんでん)・霊(たま)の湯棟」、1924(大正13)年に「玄関棟」と「南棟」を増築して、現在の姿となった。

 2019(平成31)年1月、温泉としての営業を続けながら保存修理工事に着手。8月19日には道後温泉の公式サイトに「保存修理工事特設ページ」が開設され、修理の記録や現場の作業担当者の声などを掲載している。

 8月10日に行われた第1回の見学会では、30人の定員に対して145通の応募が寄せられた。松山市産業経済部道後温泉事務所の山下勝義さんは「市の広報に掲載する前だったにもかかわらず、多くの方に関心を持って応募していただき本当にうれしく思っている」と手応えを語る。

 工事用の素屋根に覆われ、屋根瓦が取り除かれた修復工事中の現場では、増改築を繰り返して現在の姿に至った道後温泉の歴史を、担当者が構造面などの視点から解説。見学者は質問を交えながら熱心に耳を傾けた。

 可能な限り全ての部材を元の場所で再利用するため、解体された壁や床板の一枚一枚には、元の場所を示すラベルやくぎ穴の位置を示すチョークの印が付けられている。屋根裏からは、当時建築に携わった大工が、工事の時期や自らの名前などを書き記した「墨書」も複数発見されており、貴重な資料として保存される。

 保存修理工事は、ほとんどの部分を地元の業者が担当しているが、障壁画など一部の装飾部分は、京都の専門業者に、取り外し・移送から修復までを委託。特に「又新殿・霊の湯棟」の壁画部分は、パネル状の障壁画を壁にはめ込んだ構造となっており、熟練した職人も取り外しに苦労したという。

 又新殿・霊の湯棟で解説を担当した、道後温泉本館保存修理工事管理者で文化財建造物保存技術協会の梅津秀基さんは「解体してここに並べられている部材の一つ一つが文化財。現存する資料だけでは分からなかった建築技術や建物の歴史が、解体作業をすることで初めて理解できることもある。解体修理作業は、非常に貴重な文化財調査の機会」と工事の意義について話す。

 「入浴施設としていつの時代も人が絶えなかった道後温泉は、これまでに行われた増築や修復工事でも大急ぎで作業をした痕跡が見て取れ、先人の苦労がしのばれる。120数年かけて現在の姿になった道後温泉を、7年の工事期間を経て今後100年先へつなぐ今回の作業をできるだけ多くの人に興味を持って見守ってもらえれば」と話した。

 今後の見学会は、10月26日・11月23日・12月21日のそれぞれ10時・13時・15時から。所要時間は1時間程度。対象は10歳以上で、定員は各回30人(応募者多数の場合は抽選)。参加には保険料として500円が必要。申し込みはインターネット専用応募サイト、または往復はがきで受け付ける。問い合わせはポニーキャニオンカスタマーセンター(0570-000-326)まで。

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