「ことばのちから」をキーワードにまちづくりを進める松山市が8月13日、10年ぶりに「だから、ことば大募集」を始め、「想(おもい)」をテーマに全国から応募を募っている。
「ことばのちから」は21世紀を目前に控えた2000(平成12)年、社会の変化の中でコミュニケーションの重要性が高まっているという思いを出発点に、松山市が発足したプロジェクト。「坊ちゃん」や「坂の上の雲」の舞台であり、正岡子規などの文人を輩出した文化的土壌を生かして、形の無い「ことば」を軸に据えたまちづくりを始めた。
初回の募集テーマは「21世紀に残したい、伝えたいことば」。全国から1万2001通の応募が寄せられ、ユニークな表現で「身も心もあったまるで賞」を受賞した「心のパンツを脱ぎなさい。」や、「君の速さで歩(ゆ)けばいい。」「いろんな子 いっぱいおって かまん! かまん!」など多様性や個性を温かく見守るもの、「明日は アタシの 風が吹く!」と前向きな気持ちにさせてくれる言葉など、23の受賞作品が選ばれた。
その後も2004(平成16)年に「“愛”だいすきな〇〇へ…」、2010(平成22年)に第2回の「だから、ことば大募集」を行い、これまでに323作品が受賞作に選ばれている。
今回は、思いから生まれて心や人を動かすことばの力に焦点を当て「想(おもい)」をテーマに募集。審査員は野志克仁松山市長やことばのちから実行委員会メンバーのほか、松山市出身でモデルのラブリさん、ラッパーのDisryさんなど。作家の高橋源一郎さんが審査委員長を務める。
松山市の担当者は「10年ぶりの大募集をコロナ禍の中で行うことになり、特別な思いを感じている」と話す。「外出自粛や学校の閉鎖などもあり、人とのコミュニケーションが取りづらい状況だからこそ、今まで以上にじっくりと心の中で育まれた言葉があるのでは。今回の募集で、その思いを発信してみてほしい。依然として暗い状況もあるが、それを少しでもいいものに変えていける前向きな言葉が寄せられることを心待ちにしている」と期待を込める。
これまでの入賞作品は松山市内を走る路面電車の車体や、松山城へ登るリフト下のネット、松山空港の階段、ロープウェイ街のタペストリーなどに市内各所に掲示。使用審査を経た市内企業なども作品を活用しており、ホームページや名刺、社用車、店舗のウインドーなど普段の生活の中で目にする機会が多く、市民にもなじみが深い。
松山市では今後、SDGsなど、松山市が取り組む他のプロジェクトと共に「ことば」を発信していくことも検討している。
募集は10月31日まで。ホームページの応募フォームやはがき、封書、ファクス、メールで受け付ける。