松山中心市街地の映画館「シネマサンシャイン大街道」(松山市大街道1)が1月11日に閉館し、32年の歴史に幕を閉じた。
全4フロアに42~110席と比較的小規模な5スクリーンを備え、アート系の作品を上映するなど特徴ある運営で多くのファンに親しまれてきた同館。
館内に設置されたメッセージボードには「県で一番良い映画館だとずっと思っている。アート系作品も海外作品もここでたくさん見た」「松山映画祭などのイベントでは、古い名画も見せてもらった。ニューシネマパラダイスを見たのは懐かしい思い出」「生活の一部、日常の景色の一部で、空気のようにそこにあるのが当たり前の存在だった」など、多くの思い出が寄せられた。
同館を運営する佐々木興行は1978(昭和53)年12月、「松山シネマサンシャイン」(三番町3)をオープン。次いで1989(平成元)年12月に「シネマサンシャイン大街道」をオープンし、2003(平成15)年には大街道店に統合する形で松山シネマサンシャインを閉館していた。
2000(平成12)年以降は、郊外型のショッピングセンター内にシネマコンプレックスタイプの映画館を相次いでオープン。現在愛媛県内では「シネマサンシャイン衣山」「シネマサンシャイン重信」「シネマサンシャインエミフルMASAKI」の3館を運営している。
子どものころから同館に通っていたという松山市在住の女性は「地方都市にいながら、若いころからアート系や単館上映の貴重な作品などに触れられたのはシネマサンシャインのおかげ。こぢんまりとしたアットホームなスクリーンが無くなってしまうのは寂しいが、これからも独自のセレクションで愛媛に映画文化を届け続けてほしい」と話す。
8日からは「ディストラクション・ベイビーズ」「がんばっていきまっしょい」「船を降りたら彼女の島」をはじめ、近年のヒット作や、松山に縁のある作品を上映。最終日の夜には常連客らなど約300人が訪れた。
最後の作品の上映後には、佐々木淳専務が「コロナ禍の中でも、映画が心を癒やす役割に変わりはない。ご愛顧いただきありがとうございました」とあいさつした後シャッターを下ろし、閉館を惜しむファンの拍手の音が商店街に響いた。