3月にオープンした「松山さかのうえ子ども食堂」(松山市中村2)が、弁当の配布や外国人家族のための病院同行ボランティアなど、新しい試みを始めている。
企画は「松山さかのうえ日本語学校」代表の山瀬麻里絵さん。3月から毎週水曜に開いている「松山さかのうえ子ども食堂」では、留学生や市内在住の外国人シェフが利用客に自国の料理を振る舞い、子どもたちには「温かいごはんをおなかいっぱい食べられる楽しい居場所」を、コロナ禍で孤独に悩む留学生には交流の場を提供している。
これまでに登場した料理は、ネパールや韓国、ガボン、セネガル、インドネシア、インド、フランスなど国際色豊か。会場では食事を終えた子どもたちが、ボランティアスタッフや留学生とお絵描きや折り紙を楽しんだり、宿題に取り組んだりして思い思いに過ごす。
6月からは毎週水曜に加えて第2・第4土曜にも子ども食堂を開催。それ以外の日には毎日、弁当を配布している。フロア内にはお下がりを交換する古着コーナーを設けるほか、不定期で開く無料の出張美容室「キッズカット」も好評を得ている。
首都圏を中心に、在留外国人の生活支援や日本語教育に携わった経験を持つ山瀬さん。「日本に住む外国人から『もっと日本の人と仲良くなりたい、もっと自分の国を紹介できる場所が欲しい、自分の能力を生かす仕事がしたい』という声を多く聞いてきた」と話す。
2人の子どもを持つ身として、子どもの貧困問題や、忙しい共働き世帯、シングル家庭などでゆっくりと温かい食卓を囲むことができない子どもたちにもアプローチしたい思いがあったという山瀬さんは、これらの2つの課題を解決するための第一歩として、外国人シェフに自国の料理を振る舞ってもらう子ども食堂を企画。クラウドファンディングで資金を募り、昨年12月に初めてのイベント「外国人×子ども食堂」を開催した。
会場を提供するのは、山瀬さんが知人の紹介で知り合った三福綜合不動産(中村2)の中矢孝則社長。助成金に加え、協賛企業から食材の寄付や支援を受け、ボランティアや留学生らの協力を得て3月から定期開催を続けている。
7月のサービス提供開始を目指す「病院同行ボランティア」は、日本の病院システムに不慣れな外国人に付き添い、スムーズな受診をサポートするサービス。山瀬さんは「問診票や処方箋、薬の飲み方など、日本の病院システムに戸惑う外国人は多い。必要なのはごく簡単なサポートだが、病院に行くのは急なことが多く、従来の事前予約制のサービスでは充分な支援にならないと感じていた。『予約不要で、困っているそのときにいつでも誰かが支えてくれる安心』を提供したい」と話す。
「子ども食堂にもだんだん来てくれる人が増えて、活動が軌道に乗ってきたと感じている」と山瀬さん。「現状の達成度は、最終目標から見るとまだ2%くらい。子ども食堂は長く続けたい取り組みだが、費用面を助成金に頼っており、今年10月以降の予算はまだ確保できていない。今後は法人化も視野に入れて、持続可能な仕組み作りを進めたい」と意欲を見せる。
「外国人のサポートも子どもの貧困問題も、どちらも人が重要と感じている」と山瀬さん。「いつも自分のことを信じて背中を押してくれる存在がいることや、笑顔で迎えてくれる居場所があることの重要性には、国籍も年齢も関係ない。外国人も子どもも大人も、みんなが安心して仕事や勉強できる街づくりを目指し、愛媛、全国、そして世界中を巻き込んでいきたい」と笑顔を見せる。
子ども食堂の開催は、毎週水曜と第2・第4土曜の16時~19時。弁当配布は子ども食堂開催日以外の毎日17時~17時30分。いずれも、子ども=無料、大人=300円。