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松山発、全国に広がる「シトラスリボンプロジェクト」 コロナ差別解消目指す

東京の老舗組みひも工房「龍工房」が、野村シルク「伊予生糸」を使って編み上げた組みひもで、贈呈セレモニー参加者らが「シトラスリボン」の3つの輪を形作った。

東京の老舗組みひも工房「龍工房」が、野村シルク「伊予生糸」を使って編み上げた組みひもで、贈呈セレモニー参加者らが「シトラスリボン」の3つの輪を形作った。

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 コロナ差別の解消を目指して松山市で始まった「シトラスリボンプロジェクト」が全国へ拡大し、有志のグループや企業、地方自治体主導で啓発の輪が広がっている。

プロダクトデザイナーの山田さんが3Dプリンターで作成した「シトラスリボン」

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 シトラスリボンプロジェクトは「地域・家庭・職場や学校」を表す3つの輪のモチーフを身に着けることで、困っている人や頑張っている人に「私は応援しているよ」という気持ちを優しく伝えることを目的に始まったもの。誰もが「ただいま、お帰り」と言い合える優しさを持つことで、安心して検査や治療を受けられる環境をつくり、社会全体で感染拡大防止につなげることを目指している。

 プロジェクトを運営する「ちょびっと19+」は、松山大学法学部准教授の甲斐朋香さんら9人の有志が運営するグループ。「ほんの少しの力だが、社会に小さなプラスをもたらしたい」という願いを込め、WHOが定めた新型コロナウイルス感染症の国際名「COVID19+」をもじって名付けた。

 同グループの結成は4月上旬。代表の甲斐さんは「愛媛県内でも感染者の発生が報道されるようになり、感染者やその家族に対する誹謗(ひぼう)中傷が起きているという悲しい話を耳にするようになったころだった。社会もインターネットもギスギスしたムードであふれていて、顔を出して何かものを言うにはとても勇気が必要な雰囲気を感じており、だからこそ何か行動を起こさなければという気持ちになった」と当時を振り返る。

 「コロナ禍の危機感やストレスから、感染者や医療従事者に対する差別だけでなく、いわゆる『自粛警察』のような風潮や、『差別は駄目』と声高に正義を主張することでかえって誰かを傷つけてしまうような状況が生まれていると感じていた」と甲斐さん。「シトラスリボンプロジェクトでは、リボンを身に着けることでそっと誰かへの応援の気持ちを表し、声高な主張ではなく共感を軸にして、無理なく眉にしわを寄せず活動していくことを目指している」と笑顔を見せる。

 「共同代表の一人に名を連ねているが、私が決めたのはグループの名前だけ」と甲斐さん。「グループメンバーのアイデアがどんどん形になり、数多く寄せていただいた問い合わせに対応する中で活動方針が決まってきた部分もある。多くの人の共感が形になって広めてもらっていると感じている」と感謝の気持ちを口にする。

 3つの輪を作る「シトラスリボン」の結び方が、伝統工芸である組紐や水引細工で「叶(かのう)結び」「花結び」などと呼ばれる古くからのモチーフだったこともあり、四国中央市の水引メーカー「ヤマニシ」(四国中央市)や、野村町の生糸と東京組みひもの老舗「龍工房」(東京都中央区)とのコラボレーションなど、伝統工芸を通じて生まれた縁も。自社製品のパッケージにシトラスリボンを付けたり、ワークショップでリボン作りを楽しむなど、活動は多彩な形で広がっている。

 松山市在住でプロダクトデザインを手掛けるリプルエフェクト(松山市保免上1)の山田敬宏社長は、3Dプリンターで印刷できるリボンのデータを作って一般に配布。「作業を進める中でプロジェクトの取り組みを深く知り、どうすればより貢献できるか考えるようになった」と話す。山田さんのデータを元に印刷した3Dプリントのリボンは、触って形を楽しめるリボンとしてグループを通じ、視覚障がいを持つ人に寄贈した。

 「感染者が出た、出ないで一喜一憂するのではなく、その後にどれだけ的確な対応ができるかどうかで地域の力が試されていると思う」と甲斐さん。「ホームページでは身近な素材で作れる『叶結び(シトラスリボン)』の作り方を紹介してる。意外と難しくて面白いので、おうち時間で楽しんでみて」と呼び掛ける。

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