松山を中心にラーメン・つけ麺店を展開するアザース(松山市松前町2)の海外店舗「麺鮮醤油房周月セントラル店」「クオリーベイ店」(香港)が、8年連続でミシュラン・ビブグルマンに選ばれた。
同社の創業は2005(平成17)年。スープやつけだれの材料は、利き酒師とソムリエの資格を持つ中川周平社長が厳選したもの。梶田商店(大洲市中村)の生揚げ(きあげ)醤油に、瀬戸内産いりこや熊本産牛深のさば節、北海道の真昆布などの素材を合わせて仕込んだスープやつけダレと自家製麺が特徴で、直営店のほか、フランチャイズ店も展開している。
「ミシュランガイド香港・マカオ2021」で紹介されている香港の店舗は2012(平成24)年3月と2013(平成25)年4月のオープン。同社の海外展開1・2号店にあたる。2017(平成29)年に投稿されたミシュランガイド公式サイトの記事では「香港では数年前まで『つけ麺』を知っている人はほとんどいなかった」と同店を紹介する。
「出店のきっかけは、日本の店舗を訪れて『周平ラーメン』の味を気に入ってくれた現地の人からのオファーだった」と中川社長。「つけ麺の存在自体が全く知られていない上、香港は『麺文化における世界の中心』と言っても過言ではない場所。世界中から超一流の店が集まる香港で勝負することには、正直不安しかなかった」と当時を振り返る。
「初めての海外出店だったが、現地流にカスタマイズすることはせず、日本の店と同じものを同じ形で販売することに決めた。生卵のトッピングもそのうちの一つ。当時の香港に生卵を食べる習慣はなかったが、日本の店と同じものを、ということで販売してみることにした」と話す。「ミシュラン・ビブグルマンに選ばれたのは、他にない、群を抜いて特色のあるラーメン店だったからだと感じている」とも。
香港店では日本と同じ「つけめん」「旨(うま)辛つけめん」や「周月ラーメン」「油そば」などのほか、各種トッピング、おでんなどもそろえる。
「生卵のトッピングは、若い人を中心に『初めて体験する日本オリジナルの食文化』として興味を持ってもらい、予想外に多くの注文を受けた。つけ麺とともに、新しい日本の食文化も受け入れてもらうことができたと感じている」と中川さん。「昨年頃から香港で『卵かけご飯』がブームになっているが、私たちの店が火付け役になったのでは、とも思っている」と笑顔を見せる。
「松山や愛媛の人は馴染みがありすぎて気付かないが、『ラーメン屋におでん』というのは愛媛独特の文化のひとつ」とも。「ラーメンに合わせてつまめる『おでん』は、ゆっくり時間をかけて食事を楽しむ香港の文化にマッチして好評を得た。香港のお客さまには日本の食文化だけでなく、愛媛ローカルな文化も楽しんでもらえれば」と期待を寄せる。