松山に9月7日、保護猫カフェ「Nyacotto(ニャコット)」(松山市春日町)がオープンした。
店主の大野恭子さんは「保護猫カフェは、新しい家族との出会いを待つ猫と、猫を愛する人をつなぐ場所。猫と遊ぶ、猫の命を守るためのサポートをする、猫と人生を送るなど、その人に合った猫との付き合い方を見付けてほしい」と話す。
店は、県内で猫の保護活動をしている人の実家を好意で借り受けたもの。古民家の魅力を生かしたセルフリノベーションで、ロフトのある吹き抜けの空間には天井まで届くキャットタワーを設置。太い天井裏の梁(はり)もキャットウオークとして生かし、猫が自由に遊んだり、好みの場所に潜んでゆっくり過ごしたりできるよう工夫を凝らした。
9月17日~20日には愛媛県内のハンドメイド作家26人の協力を得て、雑貨やアクセサリー、焼き菓子、猫グッズなどを販売するチャリティーイベントが開催されるなどの支援が広がっている。今後も隣接する庭園スペースを活用して、キッチンカーなどのイベント開催を予定しているという。
大野さんは「保護猫カフェでは猫の生活空間に人間が訪れて、自由に遊ぶ個性豊かな普段の姿を見たり、触れ合ったりできることが最大の魅力。子猫だけでなく、落ち着いた大人の猫の魅力も伝え、新しい家族につないでいきたい」と話す。気に入った猫がいて家族に迎えたい場合は、申し込み後、面談やトライアル期間を経て猫との相性を見極めてから正式に譲渡するシステムを採用している。
これまで40匹ほどの保護猫を、新しい家族につないできたという大野さん。結婚を機に保護犬を家族に迎えたことが、動物保護に携わるきっかけになったと話す。保護犬との出会いを機に活動に関わる人とも知り合い、子育てが一段落した数年前から1年に5~10匹の猫を引き取って飼い主との縁結びをするようになった。
「松山では多くのボランティアが保健所に収容された犬や猫を引き出して、新しい飼い主につないでいる。保健所に収容された犬や猫の保護期間は公示から11日間。ボランティアはみんな動物が好きで幸せにしてあげたくて、医療費や飼育のための費用を自腹で工面しながら保護活動を行っているが、経済的な負担や、限られた公示期間の中で預かるかどうかを決断するストレスは決して小さくない」と大野さん。
同店に暮らす猫は保健所から引き出されたものや野良猫、多頭飼育崩壊の現場から保護されたものなどさまざま。猫白血病と猫エイズの血液検査、三種ワクチンの接種など初期のメディカルチェックを終え、人に慣れてストレスなく過ごせるようになるまでの間は、大野さんの自宅でデビューのためのトレーニングを積んだり、新しい家族を探したりして過ごしている。
「野良猫や、耳にカットマークの入った地域猫が街中で過ごす様子を見掛けると心が和むが、のんびりとした可愛いらしい姿は外で暮らす猫のほんの一面に過ぎないということを知ってほしい」と大野さん。
「松山では毎年約3500匹の猫が交通事故で死んでいる。現代の環境は、猫が外で自由に暮らすにはあまりにも過酷。ノミ・ダニや寄生虫に苦しんでいる猫も多く、平均寿命は3~5年程と飼い猫に比べて極端に短い」と、保護猫を引き取る人には、避妊・去勢手術と完全室内、終生飼育の誓約を依頼する。
「幸せに一生を終えることのできる命を一匹でも増やしたい。地域全体で動物愛護への理解を深め、不幸な命をなくしていきたい」と大野さん。将来は基金の立ち上げや、行政と連携した保護動物の受け皿づくり、啓発活動なども行っていきたいと話す。
営業時間は11時~17時。営業日はホームページで知らせる。入店にはマスクと靴下の着用が必要。入店料は寄付方式で、目安として最初の30分サンクスドリンク付きで700円、以降30分ごとに500円を募る。猫には市販のキャットフードと手作りご飯を与えており、野菜や米、ジビエ(有害駆除されたシカやイノシシなど)の寄付も受け付けている。