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松山の愛媛県美術館で「生誕200年 三輪田米山展」 人物像や作品の魅力紹介

美術館のエントランスには、米山が手掛けた高さ5メートル以上の迫力ある神社の幟(のぼり)が展示されている

美術館のエントランスには、米山が手掛けた高さ5メートル以上の迫力ある神社の幟(のぼり)が展示されている

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 松山の愛媛県美術館(松山市堀之内)で現在、松山の書人・三輪田米山の作品を一堂に集めた展覧会が開催されている。

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 三輪田米山は1821年生まれ。松山の日尾八幡神社(南久米町2)で神職を務める傍ら、教育者や書人としても幅広く活躍した。「酒を愛した人」として知られ、何物にもとらわれない「天真自在」の書風は、松山一円だけでなく、多くの美術コレクターからも高い評判を得ているという。

 三輪田米山顕彰会(鷹ノ子町)と共に展覧会を企画した学芸員の長井健さんは「酒を愛し『酔余の書』として知られることが多い米山だが、本来の姿は生真面目で博学な知識人であり、書を書き、歌を詠み、神主や知識人として地域の人々に慕われて尊敬を集めた人格者だった」と話す。

 「『書は人なり』という言葉が示す通り、米山の書には自由でありながらまっすぐに芯の通った実直さがある。日記には千冊以上の法帖類(書道の手本)の記録も登場し、日々熱心に研さんを積んでいた研究心旺盛な姿が浮かび上がる。びょうぶや掛け軸などの作品だけでなく、日記などの資料も通じて、米山の書と人物像の魅力を地域の人により深く知ってほしい」とも。

 米山作品コレクターの第一人者として知られる大阪の実業家、山本發次郎氏の収蔵品(大阪中之島美術館所蔵)を31年ぶりに里帰り展示するほか、愛媛県美術館の収蔵品や地域の自社や自治体、個人蔵などの作品も一挙に展示。米山が多く手掛けた「神名石(しんめいせき)」や「注連石(しめいし)」などは、石碑の拓本に加え、貴重な肉筆の原本も展示している。

 長井さんは「企画の段階では、個性的な米山の作品を一挙に百点も展示すると胸やけがしてしまうのではないかと心配したこともあったが、全くの杞憂(きゆう)だった」と話す。「米山の書は空間構成や間の取り方が絶妙で、多くの作品を並べても決して重くならず、軽やかで爽やか。この展覧会の企画を通じて初めて本格的に米山の書に向き合ったが、知れば知るほどその面白さと魅力に引き込まれている」とも。

 「図録や写真で観るのと、肉筆の作品に直に向かい合うのでは全く感じ方が違う」と長井さん。「作品に向き合うと、文字の後ろに広い空間が広がり、文字が浮かび上がってくるような感覚がある。『酔余の書』として知られることの多い米山の作品だが、その背景にある繊細さやリズムの心地よさ、計算し尽くされた構成とアドリブのバランスには、積み重ねてきた修練と人格がにじみ出ており、決して酒の勢いで自由勝手に書いたものではないことがよく分かる」とも。

 米山芸術の魅力をより深く知る機会として、11月20日には長井さんが講師を務める連続講座「米山の書はどう見れば面白い」を、21日には作品ボランティアガイドがナビゲートする対話型観賞プログラムを、それぞれ開催する。

 「米山の作品は、書を志す人なら誰もが憧れるような天真自在の境地そのもの。迫力ある代表作ばかりでなく、日々の細かな生活を几帳面に記し、時には断酒を試みて挫折した様子なども記されている日記など、さまざまな角度から米山の人物像を知ることで、書の魅力をより深く感じてほしい。現代にも通じるデザイン性の高い作品も多いので、グラフィックデザインの視点から若い人にも楽しんでほしい」と来館を呼び掛ける。

 開館時間は9時40分~18時(最終入場は17時)。月曜休館。11月30日まで。

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