愛媛生まれの高級かんきつ「紅まどんな」の規格外品を「紅どまんなか」と名付けて首都圏をメインターゲットにメルカリで販売する取り組みが伊予で生まれ、11月25日、第1弾の発送作業が始まった。
「規格外の美味しさ」をアピールするチラシで、紅どまんなかの魅力と楽しみ方を伝える
ユニークなネーミングとインパクトあるキャラクターの段ボール箱で新たな販路開拓に挑むのは、伊予市で子どもおさがり専門店「metome(みとうみ)」(伊予市米湊)を経営する逢沢亜月さん。2016(平成28)年に東京から移住し、伊予市地域おこし協力隊の中山町佐礼谷地域担当として3年間活動。その後起業して、地域に根ざした新しい仕組み作りに携わり続けている。
逢沢さんは「初挑戦となる今年の販売目標は1トン。SNSなどでの情報発信力が高い『首都圏の若い世代』にメインターゲットを絞り、口コミでの販路拡大を狙っている。高齢化が進む地域の農家と地域おこし協力隊や若い世代が手を組んで、愉快に、ポップに、新しい価値創造や地方の生産者と大都市圏を結ぶ仕組み作りに挑戦したい」と意欲を見せる。
「紅まどんな」は愛媛県農林水産研究所果樹研究センターで「南香」と「天草」の交配により「愛媛果試第28号」(通称=愛果28号)として誕生し、2005(平成17)年3月23日に品種登録された。甘みと酸味のバランスや香りの良さ、柔らかくジューシーな食感から「樹になるゼリー」と評され、4Lサイズの大玉では1個1,000円以上、首都圏のデパートなどでは1個数千円で販売されることもある。
ブランド名を冠して流通するのは、県内で栽培された「愛果28号」のうち、JA全農えひめによる光センサー糖度測定や外観・着色・形などの厳しい選別基準に合格したもののみ。厳格な選別を経て出荷する「紅まどんな」は、高い市場評価と価格などのブランドを確立することに成功したが、十分なおいしさながら小さな傷などがあるために「紅まどんな」を名乗れない果実も多く発生し、農家の収入低下につながるなどの問題も生まれている。
「きっかけは昨年、知り合いの生産者に『紅まどんな』規格外品の販路開拓相談を受けたことだった」と逢沢さん。首都圏の友人や知人、家族、親戚などを中心にSNSで告知したところ、口コミですぐに約400キロを完売した。
逢沢さんは「愛媛の人なら紅まどんなや愛果28号のおいしさは誰でも知っているが、東京や首都圏で働いている知人友人は、紅まどんなだけでなく、近年新しく作られたおいしい高級かんきつ品種のことを全くと言っていいほど知らないことに改めて驚いた」と話す。「JAがブランドを育て、高い市場価値の確立に成功した一方で、せっかくのおいしい『田舎の宝』が、鎖国状態の中で価値を見出されないまま放置されるような状態があちこちで起きており、本当にもったいないと感じている」とも。
「今年は、佐礼谷の松浦義憲さん、中島町の池下克明さんの2人と契約を結び、ブランド規格外の愛果28号、約1トンを確保した」と逢沢さん。松浦さんの「紅どまんなか」は伊予市山間部で「屋根掛けみかん」と呼ばれる暖房を使わないハウスで栽培したもの。池下さんは露地栽培で袋掛けをして育てている。
「メルカリは、地方と提携して農産物の産地直送などを通じた地域活性化に取り組んでいる」とも。農産物のEC販売は全体の約2%と、他分野の平均8%に対して大きく遅れを取っている。地域おこし協力隊が生産者と提携してITリテラシーの向上やネット活用の拡大を進めることで、農産物のEC販売割合を引き上げることを目指しているという。
「農業の現場と都会のリアルな消費者の声、潜在力のある商材が眠っている地方の現状を行き来しながら俯瞰(ふかん)していると、農業の未来は明るいと感じる」と逢沢さん。「都会の高級店やデパートで、高くておいしいものが買えるのは当たり前。これからは田舎で眠っているものを、どんどん紹介することが喜ばれる時代。今回のプロジェクトを通じて、生産者が消費者の全体像を俯瞰し、地域に眠る労働力を掘り起こしながら『いかに売るか』を真剣に考え直すきかっけにもなれば」と期待を込める。
「紅どまんなか」5キロ入りは、メルカリで送料込み5,422円。7キロ入り、「紅どまんなか」5キロと温州ミカンの詰め合わせなどの販売も予定している。