松山市で放課後等デイサービス「マルクスコラ」などを運営するマルク(松山市吉藤3)が、障がいのある児童のeスポーツチーム「マルクスコラ サイクロンズ」を結成した。
同様の取り組みは全国的にもほとんど例がなく、愛媛県では初の試み。障がいがあっても、誰もが同じフィールドで競い合うことができるeスポーツの特性に着目し、「各自の個性などから、学校での『部活動』に取り組むことが困難な障がいのある児童にも、仲間と共に取り組む『部活動』でしか得られない時間を経験し、かけがえのない財産にしてほしい」との思いでチームを立ち上げた。
「マルクスコラ サイクロンズ」の活動開始に際しては、保護者説明会を実施。「レクリエーションではなく部活動として取り組むこと」を重視して練習時間を設定し、大会や県の事業に積極的に参加をしていくなどのルールの下、規律ある取り組みを行っている。
6月6日には活動の第1弾として、愛媛県主催の「eスポーツ体験会」に参加。県内3カ所をインターネットでつなぎ、「マルクスコラ サイクロンズ」の部員らが「愛媛FC」「愛媛マンダリンパイレーツ」「愛媛オレンジバイキングス」など、愛媛県内のプロスポーツチームの選手らとe-スポーツで対戦した。
「パワプロ(野球ゲーム)」でプロ野球選手に勝利した「マルクサイクロンズ」の上野颯太さん(10歳)は「パワプロで勝てたので、一緒にやった選手に今度会ってみたい」と笑顔を見せた。
マルクでは、2006(平成18)年に愛媛県初の「障がい者就労継続支援A型事業所」を開設。一般の会社に雇用されることが困難な障がい者と雇用契約を結び、実際の仕事を通じて社会性やスキルを身に付けることで、これまでに80人以上の一般企業への就労を実現している。
2016(平成28)年には、障がいのある児童の将来的な就労や自立の準備に特化した療育プログラムを提供する、就労自立準備型の放課後等デイサービス「マルクスコラ」を開設。利用者一人一人のライフステージに応じた就労や自立のための支援を行い、全ての卒業生が進学や一般企業、福祉事業所などへの就労を実現した。
社長の北野さんは「部活動で得られる経験は人生の糧になり、社会に出るために必要なスキルも学べる。『勝ってうれしい、負けて悔しい』経験を通じて成長を実感することもできる。仲間と喜びを分かち合うこと、先輩や後輩との関り方を学ぶこと、チームの中の自分の存在を意識してコミュニケーションを取ることなど、eスポーツへの取り組みを通じて、障がいのある児童たちの療育面にも効果があることを実感している」と活動の手応えを語る。
「我々も支援の一環として取り組みつつ、生徒たちの中で、eスポーツを通じたコミュニケーションがさらに広がればうれしい」とも。
チームでは今後も、愛媛県のイベントや大会に積極的に参加する。
北野さんは「大きな目標を目指したいので、今後は、国体予選への出場なども視野に入れて練習タイトルを増やしていく予定。いつか自社で『マルク杯』などのeスポーツ大会を主催したい」と今後の展開へ意欲を見せた。