まつちかタウンの老舗洋品店「バラ」(松山市湊町5)が松山市駅前商店街に移転して1カ月が過ぎた。店主の藤井昇さんは、市駅前での新しい展開を模索している。
新店舗は、いよてつ高島屋を背に、市駅前の横断歩道を渡った真正面という好立地。藤井さんは「地下街から市駅前商店街に移転して、見える景色が変わった。毎日が楽しくなったし、新鮮でワクワクする。やりたいことをやろう、と気持ちが前向きになっている」と笑顔を見せる。
同店は1971(昭和46)年創業。松山市駅地下街の「まつちかタウン」で婦人洋品店として49年間営業を続けてきたが、コロナ禍の影響による客足の減少などを受け、旧知の縁による紹介で市駅前商店街への移転を決めた。9月27日まで閉店セールを実施。閉店後、家族総出で数時間の間に新店舗への商品搬送などを済ませ、10月2日に新店舗をオープンした。
「『市駅前商店街の顔』ともいえるこの場所は、バス・路面電車の乗客や市街地へ訪れた買い物客らをはじめ、近隣の塾へ通う学生、タクシーの運転手や空港からのリムジンバスを降りる旅行客など、たくさんの人が行き交う場所。これまでは婦人服のみを取り扱っていたが、今後は市駅前の立地を生かし、この場所を訪れる人たちのニーズに応えられる店づくりをしていきたい」と意欲を見せる。
店内には、婦人服を陳列している店頭スペースに加え、各2~3坪ほどの個室6室も備える。今後本格展開を検討しているインスタグラムやネット販売用写真の撮影スタジオとして利用するほか、「遊び心のある活用方法を、いろいろ考えているところ」と藤井さん。
藤井さんは「接客が好きでこれまで長年店を守ってきた母のためにも、50周年を迎える来年4月までは、これまでの店の雰囲気を引き継いで現在の体制で営業を続ける予定」と話す。
「この場所の可能性は無限大だと感じている。今後は、駅に面した『市駅前商店街の顔』の立地を生かして、道行く人が思わず立ち止まるような店づくりをしていきたい。大型ディスプレーの設置や催事へのスペース提供、夜の間だけ他の業態で使ってもらうなど、この場所を生かし切れるよう、いろいろなアイデアを温めている。店の利益だけでなく、市駅前商店街や地域全体の魅力アップにつながるような取り組みができれば」と熱く語る。