大規模リニューアルを進めている松山三越(松山市一番町3)の5階・6階に11月6日、エイジングケアパーク「Aging Care E3」がオープンした。
HIROTSUバイオサイエンス社長の広津崇亮さんと、N-NOSE検査キット(右上)、線虫の嗅覚を活用したがん検査の様子(右中・下)
施設の監修を担当したのは、2006年(平成18)年から愛媛大学抗加齢・予防医療センターの立ち上げに携わり、2011(平成23)年にセンター長に就任した伊賀瀬道也教授。「美容」と「健康」の2つの側面から、加齢とともに起こるさまざまな機能低下の防止を目指すショップやジムを備え、検診サービスなどを提供する。
6階は女性会員限定のフロアで、セルフエステやジムなどを設置。5階では機能性表示食品や健康食品を販売するほか、美容機器、フィットネスマシンなどの企業19店が出店している。線虫の嗅覚を活用したがんの一次スクリーニング検査サービス「N-NOSE」(HIROTSUバイオサイエンス)の四国初の拠点も同フロアにオープンした。
線虫は土の中などに広く生息している体長1ミリほどの生物。単細胞動物以外では初めて、1998(平成10)年に全DNA配列が解明された生物で、モデル生物として広く研究の場で活用されている。
N-NOSEは、線虫が持つ優れた嗅覚を応用して、ステージ0の段階から、86.3%の感度で胃・大腸・肺・肝臓・膵臓(すいぞう)をはじめとする15種類のがんを検出することができる検査システム。ステーションで検査キット(1万2,500円)を購入後、尿を採取して提出すると、4~6週間で結果が自宅宛てに届く。
HIROTSUバイオサイエンス社長の広津崇亮さんは「松山には創業の翌年、2017(平成29)年に解析センター(桑原7)をオープンしていた。四国がんセンター(梅本)は全国で2番目に臨床研究に協力してくれた施設でもあり、深い縁を感じている場所。松山に早く拠点を作りたいという気持ちがあったところ、今回、エイジングケアパーク内にステーションを開設することができた」と話す。
「現時点で、スクリーニングの感度は86.3%。言い換えると、がん患者100人を対象にN-NOSEで検査を行ったとき、そのうち86人の検体に対して陽性の診断が出る、ということになる」と広津さん。「自分も研究者なので、精度を100%に近づけたいという思いはあるが、コロナウイルスのPCR検査をはじめ『全ての検査は100%の精度を保証することができない』のが現実。N-NOSEの普及によって、がんの早期発見を進めるとともに、検査とはどういうものなのか、というリテラシーの向上や啓発も進めていきたい」と話す。
「日本では胃がん・肺がん・大腸がん・乳がん・子宮頸がんの5大がん検診をわずかな自己負担で受けられる制度があり、腫瘍マーカー検査も普及してきている。どの検査の結果も決して100%ということはないが、異なるメカニズムの複数の検査を定期的に受けることで、がん早期発見の確率は格段に向上すると考えている。ステージ0のごく微小な段階でがんを発見できれば、簡単な治療で完治する可能性も高く、身体的・金銭的な負担や生活への影響も少なくて済む」とも。
「今月から、N-NOSEの検査でがんリスクが高いと診断された場合には、結果報告書にどのような検査を受ければいいかなどのアドバイスも記載するようにしている。松山での拠点開設を期に、松山をはじめ近県の人にも、ヘルスケアの新しい試みとしてN-NOSEを活用してほしい」と利用を呼び掛ける。
松山三越エイジングケアパークの営業時間は10時~19時。