松山に昨年12月25日、世界各国の調味料やフェアトレード製品などを販売する食料雑貨店「sleep sunday salon(スリープサンデーサロン)」(松山市三津2)がオープンした。
店主の大江誠さんが「おいしくて扱いやすいものを」とセレクトした、インドネシアやベトナム、タイなどの食品や調味料のほか、添加物不使用で作られた日本のしょうゆやみそ、塩などを販売。本や雑貨、フェアトレード製品も取り扱い、店内奥には展示やワークショップなどに使えるレンタルスペースも備える。
東京で10年間、飲食業に携わってきたという大江さん。「コロナ禍で飲食店経営者として、常に変化し続ける厳しい状況に翻弄(ほんろう)された。それを機に、産業や地方のあり方などについて新しい視点でフォーカスするようになり、5年前の電車の旅でたった一日だけ訪れた松山を思い出して移住を考えるようになった」と話す。
2021年春頃、松山の不動産会社「ワンズホーム」(須賀町1)の紹介で三津を訪れた大江さん。「三津はそのとき1時間ほど歩いただけだったが、シャッター街なのに町に『生きた感じ』があると思った」と話す。6月に現在の物件に出合い、「ここで店をしているところが想像できた」ことからそのまま契約。9月には移住して、同店で暮らしながら改装とオープンに向けた仕入れを始めた。
大江さんは「日本の調味料は、味はもちろん、変化する時代の状況に応じて頑張っている生産者の物をそろえている」と話す。「『藤原みそこうじ店』のみそはお薦めの一つ。味に、みそができるまでの考え方が出ていると感じる」とも。
「エスニック食材や調味料は、東京でカフェバーを経営していたときに使っていたものを中心に、おいしく使いやすい種類や銘柄をそろえた。東京では当たり前にスパイスなどを取り扱う店が身近にあったが、まだ地方では少ない」とインスタグラムで料理動画を紹介し、調味料やスパイス使いのアイデアを発信している。
オープンを心待ちにしていたという地元の女性は「入り口があまりにも店っぽくないので、本当にここで合っているのかとドキドキしながら扉を開けると、想像をはるかに超える異空間が広がっていてときめいた」と笑顔を見せる。「商品のチョイスに店主の人柄が感じられて、買い物をすることで店主自身を知られるような感覚がある。大切に使いたい」とも。
大江さんは「コロナ以前のようには生活の見通しがつかなくなり、行動や流通の制限がある今だからこそ、多種多様な文化が面白く化学反応を起こしている三津で、できることを実現しながら前に進んでいく店にしたい」と話す。
店を営む傍ら、料理研究や絵の販売、グラフィックデザインなどの活動も行う大江さん。「スパイスや発酵料理などを中心に展開して、いずれは店内でワークショップも開きたい。エスニック料理を通して海外気分を味わったり、皆さんの食卓が少しでも豊かになったりするきっかけになれば」と意欲を見せる。
営業時間は10時~18時。