久万高原町の「花桃の里」(久万高原町中津)で現在、約600本の花桃とソメイヨシノが例年より10日ほど早く見頃を迎えている。
「まるで桃源郷」と見る人を圧倒する絶景は、同地区に暮らす佐賀繁志さん、久寿美さん夫婦が老後の楽しみにと2008(平成20)年、自宅前に40本の花桃を植えたことがきっかけとなって生まれたもの。
以降、元々桑畑だった斜面や耕作放棄地、竹藪などを開墾して種から育てた苗木を植え続け、13年目となる今年は約600本の花桃とソメイヨシノ、菜の花やスミレなどの花々が約2千坪の春の山里を彩っている。
2019(平成31)年には斜面を見下ろす岡の上に展望台も作った佐賀さん夫婦。夫の繁志さんは、細い山道の随所に設けた臨時駐車場へ来場者を誘導。妻の久寿美さんは四季の山里の写真で彩られ、訪れた行楽客らがメッセージを寄せるノートが置かれた案内所で行楽客らを出迎える。
「一昨年までは、自家製小麦粉のパンやドーナツ、おいなりさん、焼き餅、手作りこんにゃくやユズジュースなど、手作りの山の味で来場者を迎えていたが、コロナ禍の影響で昨年と今年は中止した」と久寿美さん。「数えられただけでも、昨年は3000人が訪れてくれた。コロナ禍が落ち着いたらまた、手作りのお接待で皆さんを迎えたい」と笑顔を見せる。
「花桃を育てていると思っていたが、たくさんの人たちと触れ合う中でいつしか『自分たちが花桃に育てられている』ことに気付いた」と話す佐賀さん夫婦。案内書の壁には「中津の花咲かじいじ・ばあば」の、自然の恵みと、人との出会いへの感謝をつづる言葉が飾られている。
松山市内から訪れた親子連れは「桃源郷としか言いようのない景色に圧倒された。この景色を大切に守り育てているお二人の人柄や、それをサポートする周囲の人たちとの絆もすてきで、素晴らしい春の一日を過ごさせてもらった」と話していた。
「満開の桜と花桃の両方が楽しめるのは例年3日ほど」と久寿美さん。今年の花桃の見頃は4月初旬ごろまで続くという。